「月々の返済は、今の家賃と同じくらいです」
住宅の提案でそう説明されると、購入後の暮らしも想像しやすくなります。ただ、ローンの返済額が家賃と同じでも、住まいに使うお金の総額まで同じとは限りません。税金や保険、修繕に加え、教育費が増える時期も考えておきたいところです。
住宅予算は、購入後の住居費と教育費、将来へ回すお金を並べてから、家の希望と両立できる金額を考える。 私はこの順番を大事にしています。
家族が楽しみにしている住まいを、予算のために最初から諦める必要はありません。使いたい間取りや設備には理由を付け、住宅以外に残すお金にも使う時期を付ける。その両方を見ながら、住宅価格と借入額を検討していきます。
この記事では、家の希望、購入後の住居費、教育費、月々と賞与の配分、支払い後の資金の順に整理します。
家に残したい希望と、暮らしでの必要性を先に整理する
部屋数・広さ・設備を、実際の使い方から考える
住宅予算を見直すとき、税金や維持費を足す前に、今の提案へどんな希望を盛り込んでいるかを見てみましょう。
例えば4LDKなら、それぞれの部屋を誰が、何のために、いつ使うのか。独立した部屋が必要なのか、作業場所や収納を別の形で確保できるのか。現在の使い方に加え、暮らしが変わった後も考えてみます。
広いLDK、回遊動線、アイランドキッチンにも、それぞれ魅力があります。家事の動きや家族の過ごし方に合えば、費用をかける理由になります。一方、広さや通路を増やすことで、ほかの場所が狭くならないか、掃除や手入れを続けやすいかも確認したい部分です。
私が考えたいのは、流行の仕様を選んだかどうかより、自分たちの生活で何をかなえるために選んだかです。同じ設備でも、家庭によって使う頻度や価値は変わります。
同じ希望をかなえる別案と、費用・手入れを比較する
残したい希望が決まったら、別の形でも実現できるかを担当者と話してみます。
「家で集中して作業する場所がほしい」という希望なら、独立した個室と、ほかの空間の一部を使う案を比較できます。音や視線、収納などの条件が合わなければ、個室を残す判断もできます。
図面や見積書には、次の理由を添えると話し合いやすくなります。
- どんな場面で使いたいか
- 別案では、何がかなって何が難しくなるか
- 関連する工事まで含め、総額がどう変わるか
- 手入れや将来の交換について、何を確認したいか
部屋を減らしたり設備を外したりしても、代わりの工事が必要なら、想像したほど総額が変わらないことも考えられます。変更部分の価格だけで決めず、変更後の見積もりをそろえて比べます。
私の家で何を残し、何を見送ったかは、注文住宅の仕様と予算配分を考えた記事にまとめています。この記事では、その選択を各家庭へ当てはめるのではなく、住宅予算を決めるための確認へ進みます。
返済額以外の住居費を、税の軽減終了まで見積もる
戸建て・マンションで違う管理・修繕・保険の支払い
ローン以外の住居費には、固定資産税、地域等によってかかる都市計画税、保険、修繕や設備更新などがあります。マンションなら、管理費・修繕積立金・駐車場使用料等も候補物件の資料で確認します。
戸建てでは、屋根・外壁・防水・設備などについて、維持管理計画や点検、見積もりから、費用と時期を置いていきます。住宅金融支援機構も、工法・仕様・地域の気候等によって点検や補修の内容・時期が変わると説明しています。全国共通の月額だけで済ませず、候補の住宅に合う計画を確認したいところです。住宅金融支援機構「入居後の住まいの保守管理」
マンションの修繕積立金は、主に管理組合が行う共用部分の修繕のためのものです。自宅内の設備更新やリフォーム費用は、原則として含まれません。また、当初の積立額から段階的に増える方式や、一時金を予定する場合もあります。現在の請求額と、将来の長期修繕計画を合わせて見ます。国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
保険は、建物・家財の対象、補償範囲、自己負担となる金額、保険期間、支払い方法を見積書で確認します。更新時も同じ保険料とは決めず、更新の時期を支払予定へ残しておきましょう。日本損害保険協会「すまいの保険について」
固定資産税の減額終了は、区分と課税開始年度で確かめる
新築住宅には、要件を満たす家屋の固定資産税を一定期間減額する制度があります。減額が終わる年度も、購入後の予算に入れておきます。
減額期間と、その終了後の最初の年度は次のように分かれます。
- 一般の新築住宅のうち、下記の中高層耐火住宅等に当たらないもの:3年度分の減額。終了後は課税開始から4年度目。
- 一般の新築住宅のうち、3階建て以上の耐火・準耐火住宅:5年度分。終了後は6年度目。
- 認定長期優良住宅のうち、中高層耐火住宅等に当たらないもの:5年度分。終了後は6年度目。
- 認定長期優良住宅のうち、3階建て以上の耐火・準耐火住宅:7年度分。終了後は8年度目。
数える起点は、家屋に新たに固定資産税が課される年度です。「入居からどの住宅も6年目」とは数えません。国土交通省「新築住宅に係る税額の減額措置」、認定長期優良住宅の減税制度
この減額は、住宅部分の120㎡相当までにかかる家屋の固定資産税を2分の1にするものです。土地や都市計画税に同じ減額がかかる説明ではなく、終了を理由に税率が上がるわけでもありません。税額全体がそのまま倍になるとも限りません。大阪市「新築された住宅に対する固定資産税の減額措置」
対象床面積などの要件は建築時点等で異なり、認定や申告の確認も必要です。候補物件について、「どの区分か」「課税開始年度はいつか」「減額対象か」「申告等はどうするか」を、所在地の自治体の最新案内で確かめてください。
土地と建物、固定資産税と都市計画税を明細で分ける
税額を見るときは、土地と家屋、固定資産税と都市計画税を分けます。購入価格がそのまま税の評価額になるわけではなく、評価額と税を計算する基礎の額も同じとは限りません。
土地には住宅用地の特例や税負担の調整があり、家屋の新築減額とは別の仕組みです。評価の見直し等も関係するため、地価のニュースだけで自宅の税額が上がる・下がるとは判断できません。大阪市「住宅用地の課税標準の特例措置」、税負担の調整措置、固定資産の評価替え
納税通知書や課税明細では、土地・家屋ごとの評価額、課税標準額、税額、減額と対象年度、納期限を確認します。大阪市の通知書類の案内も、明細の見方の参考になります。様式や納期は所在地の自治体で確認してください。
購入前で明細がなければ、販売側の試算について、含まれる税と年度、減額の前提を聞き、自治体にも確認します。提示された一年分だけでなく、減額終了後の扱いを予算へ残しておきます。
教育費は、進路や活動の条件が違う案で比べておく
私は、大学卒業とともに借入を抱えて社会人生活を始めることをつらく感じ、奨学金の返済も大きな負担に感じました。その経験もあり、自分の家庭では教育資金の準備を最優先に考えています。
だからといって、家の希望をすべて抑えたいわけでもありません。住まいの楽しみと、子どもの進路や活動を考えられるお金を、どのように両立するか。その配分を買う前に話し合っておきたいと思っています。
今の月謝だけでなく、教材・用具・移動と進学時期を置く
教育費を今の月謝だけで見ていると、別払いの費用や、まとまって払う時期が抜けることがあります。
塾なら入会金、講習、教材、模試、交通費。習い事なら用具、参加費、移動。部活動でも、活動によっては用具や大会、遠征に関する支払いを考える必要があります。学校や教室の案内で、月謝に含まれるものと別払いを分けてみましょう。
総額の統計を参考にするときは、そこに含まれる塾や用具代を重ねて足さないようにします。文部科学省の子供の学習費調査は2023年度を対象としたもので、2026年現在の料金表ではありません。家庭の予算へ入れる額は、学校・教室・活動団体の納付案内や支払履歴で確かめます。文部科学省「令和5年度子供の学習費調査・調査の概要」
公私立や活動が違う案を、支払期限まで比べる
進路や活動が決まっていない段階では、一つの予想に絞らず、条件の違う案を並べられます。
公立と私立、塾や習い事を続ける場合と増やす場合、通学の条件が変わる場合などです。私立を想定した試算も一案ですが、全家庭に求める準備条件ではありません。
見るのは合計額だけでなく、入学時に払うもの、その後に続くもの、教材や用具を買う時期です。「費用の見積もりはまだない」「活動は未定」という部分は、未確定のまま印を付けておきます。
教育費を残す目的は、子どもの希望が変わったときにも、選択を考える余地を持つことです。お金をかければ希望どおりの成果が出ると考えるのではなく、費用や時間の条件を知って選べる状態を目指します。
奨学金・教育ローンは、誰がいつ返すかまで確認する
奨学金や教育ローンを使う選択もあります。私自身が返済を重く感じたことと、ほかの家庭が選ぶ方法は分けて考えています。
制度によって、給付か貸与か、借りる人と返す人、利子、返還時期が違います。JASSOでは、返還不要の給付奨学金と、無利子の第一種・有利子の第二種の貸与奨学金を区別します。JASSO・給付奨学金、貸与奨学金
第二種の利率は貸与終了月に決まり、固定方式はその利率を返還完了まで適用、見直し方式はおおむね5年ごとに見直します。将来の金利がどうなるかを断定して準備額を決めず、方式と対象時点を確認します。これはJASSOの制度の説明で、私の体験の利用制度を示すものではありません。JASSO「第二種奨学金の利子と利率の算定方法」
例えば国の教育ローンは、主に保護者が利用する制度です。借入を考えるなら、誰の家計で返済するか、受け取る時期が学校への納付期限に間に合うか、返済開始・期間・利率等の条件を確認します。まだ決まっていない融資を、確実に使えるお金として予算へ組み込まないようにします。日本政策金融公庫「国の教育ローン」
月々とボーナスの家計配分を決め、支払い後の資金を確かめる
毎月の手取りとボーナスの手取りを別に配分する
住宅費と教育費を並べたら、収入をどう配分するかを決めます。使った後の残りだけを待つのではなく、必要な用途へ先に取り分ける方法もあります。金融庁も、給料日に貯蓄用口座へ移すなど、先に貯蓄へ回す家計管理を紹介しています。金融庁「資産形成の基本」
家計のライフプランに携わった経験から、私は、まず手取りの10%程度を貯蓄・投資へ回す案を、現実的な出発点として考えています。公的な基準や、どの家庭にも十分な割合という意味ではありません。
次の家計配分表は、ボーナスを含まない月々の手取りを基準にした仮例です。10%の内訳を「将来の教育資金のための預貯金5%+長期の資産形成のための投資5%」と置いています。私の実際の家計ではありません。
この例では、現在の教育費、税・保険等の年払い、修繕準備は10%の外に置きます。賞与の比率は決めず、使う予定の額と時期から別に考えます。
購入後の通常の家計では、表の住宅費を、今の家賃から新しいローン返済など購入後の費用へ置き換えます。共益費・駐車場代等も購入後の条件で確認し、今の家賃と新しい返済を二重に残さないようにします。引越し前後に支払いが実際に重なる場合は、その期間だけ別に予定へ入れます。税・保険・管理・修繕も必要なので、家賃の全額がそのまま返済へ回せる額とは限りません。
| 枠・用途 | 月々の手取りから | 賞与の手取りから | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 月払いの生活費・住宅費・現在の教育費 | 実額から設定 | 必要な充当額を検討 | 年払い・将来教育分を除く |
| 税・保険・教育費等の年払い準備 | 請求・納付予定から設定 | 必要な充当額を検討 | 月払いと重ねず、一度だけ置く |
| 修繕・設備更新への準備 | 計画・見積もりから設定 | 必要な充当額を検討 | 家計内で準備するお金を置く |
| 将来教育の預貯金〈10%の内訳〉 | 仮例:5% | 比率は未設定 | 将来教育用として別行へ足さない |
| 長期資産形成の投資〈10%の内訳〉 | 仮例:5%(NISA利用例) | 比率は未設定 | 期間と値下がりのリスクを確認 |
| 未配分の余力 | 各行への配分後の残り | 同様に確認 | 急な支出への備え等と照合 |
マンション管理組合へ払う修繕積立金等は、住宅費の支払いへ入れます。自分の口座内で確保する修繕準備と区別してください。10%は内訳2行の小計なので、別の費目としてもう一度足しません。
ボーナスを年額から月平均へ割り振った試算を使う場合は、賞与の入金月に同じ収入を再加算しないようにします。未確定の賞与は、毎月の返済に使える確定収入とは分けて考えます。
返済に回せる月額を考えるときは、表の住宅費を「ローン返済」と「管理費・駐車場代等の返済以外の費用」に分けます。月々の手取りから、生活費・現在の教育費、税・保険や修繕の準備、将来へ回すお金、返済以外の住宅費に加え、残したい余力を確保して月額を置きます。年払い等は準備額として一度だけ数え、実際の支払いをさらに月額化して重ねません。
その月額と、候補の価格・借入額・返済条件を伝えて得たローンの試算を照合します。必要なお金や余力が残らなければ、価格・借入額・仕様等を見直して再試算します。候補の返済額を既に表へ入れている場合も、同じ返済をもう一度差し引かないようにします。全国銀行協会「住宅ローンの返済可能額」
先取りする割合を、必要額・使う時期・今の資産と照合する
割合を置いた後には、金額で確かめる作業が残ります。
将来の教育費に向けて残したい額はどれくらいか。使うまで何年あるか。すでに教育用に割り当てた預貯金はいくらあるか。それらと毎月準備できる額を照らし合わせます。
10%を続けるのが難しい家庭もあれば、10%では目標に足りない家庭もあります。表の配分は、その違いを確認するための出発点です。生活に必要な支払いを無理に削って、例の割合へ合わせる必要はありません。
NISAは、一定の投資の利益等を非課税にする制度です。預金や金融商品そのものの名前ではなく、NISAを使った投資にも元本割れの可能性があります。金融庁「NISAを知る」、資産形成の基本
近いうちに払う教育費や、急な支出に備えるお金を現金で確保できるか、先に確認します。そのうえで、投資に回す割合や時期を調整する。預貯金と投資を5%ずつに分けた例も、必要額や使う時期に合わせて変えて構いません。
用途別の取り分と、実際の支払い後の残高を分ける
月々の配分ができても、年払いの税や進学費用を払う月には、まとまった現金が必要です。年間総額を12か月に割って家計に収まるかを見るだけでなく、支払期限までに用意できるか、払った後にいくら残るかも確認します。
次の表には、自分の家庭の月・年度と、資料で確かめた支払いを置いてみてください。「支払後に残す資金」に書いた目的と、試算後に実際に残る預貯金を照らし合わせます。
| 時期 | 主な支払い | 支払後に残す資金 | 確認・見直すこと |
|---|---|---|---|
| 購入時 | 頭金・諸費用等 | 購入後の生活資金・用途別準備 | 見積もり、手元資金、借入額 |
| 毎年の納期 | 税・保険・教育の年払い | 次の支払いまでの生活資金・準備 | 納期、更新、準備額との対応 |
| 家屋の税減額終了後 | 減額終了後の税負担 | 教育・修繕等の用途別準備 | 住宅区分、課税開始年度 |
| 修繕・設備更新の時期 | 工事・設備代等 | 修繕後の生活・教育用資金 | 計画、点検、見積もり、一時金 |
| 進学・活動等の時期 | 納付金・教材・用具・移動等 | 納付後の生活資金と次の教育費 | 条件別の費用、納付と受取時期 |
| 支出増・収入減を考える時期 | その条件での支払い | 条件が変わっても残したい資金 | 配分、候補価格、借入額 |
例えば、自分の修繕用口座へ毎月取り分けたお金は、その時点では預貯金の中にあります。実際の工事代を支払うときに現金が減るので、口座への取り分けと工事代の両方を、家計全体の支出として引くと二重になります。教育用の預金も同じように扱います。
表を使う際は、次の3点をそろえます。
- 預貯金の合計と、その中の教育用・修繕用等の内訳を分ける。自分の口座間振替を支出にせず、内訳を合計へ再加算しない。
- 投資の評価額を預貯金へ足さず、借入残高も別に確認する。まだ売却していない投資を、納付日に使える現金として決めつけない。
- 家計内の準備と実支払いを二重に引かない。管理組合への積立金等は、外部への支払いとして区別する。
教育用に割り当てたお金を、修繕や返済増加への余力としても数えると、同じ資金を複数の目的へ使う計画になります。残高の大きさだけでなく、何に使う予定の資金かまで見ておきます。
家と教育の選択肢を残す条件で、価格・借入額を見直す
税軽減終了・修繕・教育・収入の変化を重ねてみる
ここまで整理した費用は、同じ時期に重なることも考えられます。家屋の税減額が終わる年に教育費が増える、修繕の時期に収入の条件が変わる、といった案でも、必要な資金が残るかを確かめます。
また、候補ローンの条件によっては返済負担も変わります。金利が上がった場合等の試算は金融機関へ依頼し、教育・修繕・生活資金を残す家計と合わせて読みます。金利タイプの基本的な違いは、変動金利と固定金利を比較した記事を参考にしてください。
支出が増えた条件で不足が見つかっても、その試算だけで購入できないと決める必要はありません。どの費用・時期・借入条件が不足につながるのかを見つけると、次に比較する案が具体的になります。
希望・仕様・物件価格・借入額の組合せを比較する
私が残したいのは、家の希望と、教育や将来を考える余地の両方です。住宅に配分できる額を知ることは、希望を削る作業だけでなく、どこへお金を使いたいかをはっきりさせる作業でもあります。
希望の用途を保った別の間取りや設備、価格の違う候補、借入額や購入時期の見直しを比べてみます。どの案にも無理が残るなら、準備を続けながら購入を保留する選択もできます。
比較の際は、見積もりの範囲をそろえ、変更後の住居費と教育費を表へ戻します。収入が増える、運用がうまくいく、将来借りられるという見込みだけで不足を埋めず、条件が違う場合も確認します。
建売や注文住宅など、住まいの候補そのものを比べ直すときは、総費用と暮らしの条件で住宅を比べる記事も判断材料になります。
まずは候補を一つ選び、見積もりに入っていない税・保険・管理・修繕の費用と、教育の支払予定を並べてみてください。金額や時期がわからない欄を、担当者への質問、自治体の案内、学校等の資料で埋める。そこから、家の希望と残したいお金を両立できる次の案を、家族で話し合えます。
公式情報の確認日:2026年10月14日。制度の対象時点・物件条件・申込条件等は、それぞれの公式資料で確認してください。

