回遊動線、ファミリークローゼット、ランドリールーム。施工例を見ると取り入れたくなっても、実際の朝の支度や片付けに合うかは、写真だけでは分かりません。
私は、間取りを考えるときに「理想の家づくり」から「理想の暮らしづくり」へ視点を移したいと考えています。自分たちの暮らしのクセを知り、今後も続けたいことと、今の家だから仕方なくしていることを分ける。そのうえで、空間をつなぐか、分けるかを比べていく順番です。
この記事では、帰宅して着替える場面、朝夕の動きが重なる場面、洗濯と入浴が重なる場面から、候補図面の見方を整理します。読み終えたら、残したい使い方と、設計担当者へ尋ねたい別案を書き込んでみてください。
※生活場面の例と比較表は、説明のための仮定です。「わが家」と記した経験とは区別しています。
間取りの写真を見る前に、今の暮らしと本当の希望を分ける
持ち物と、帰宅・着替え・寝起きの流れをたどる
最初に、今ある物と、その物を使う動きを思い浮かべます。靴やアウトドア用品はどれくらいあるか。コートをどこで脱ぎ、部屋着やパジャマにはどこで着替えたいか。寝る人がいる時間に、起きている人は何をしているか。部屋名を先に決めず、行動から場所を考えます。
例えば、帰宅後すぐ上着を脱ぐなら、しまう場所までの動きも図面に描いてみます。収納は大きくても、上着を置きたい場所から離れていれば、そこまで運ぶ使い方が自分たちに合うかを考える必要があります。
持ち物が少ない家庭と、道具を多くしまいたい家庭では、収納へ使いたい面積も違うはずです。気になる施工例を見つけたら、その部屋を足す前に、何を置き、いつ使うかを自分たちの言葉に置き換えてみましょう。
リビングでしていることは、そこで続けたいことか
今リビングで過ごす時間が長いからといって、新居でも全ての活動をリビングに集めたいとは限りません。別の場所がなく、そこで行っていることもあるからです。
例えば、家族の近くで作業したいのか、落ち着ける場所があれば移りたいのか。同じ「今はリビングで作業している」という暮らしでも、望む間取りは変わります。一人で過ごす場所を増やしても、家族の近くで続けたいことの居場所がなくなれば、希望には合いません。
今の暮らしをそのまま写す前に、続けたいことと変えたいことを分けておきます。このメモがあると、次の収納・通り道・洗濯スペースを、見た目の好みと暮らしでの必要性の両方から比べられます。
帰宅して着替える場所から、収納を集める範囲を決める
一か所にしまう便利さと、使う場所で取り出す便利さを比べる
ファミリークローゼットを考えるときは、家族の衣類をどこまで集めるかから始めてみてください。全てを一か所にしまう案のほか、日常使う物だけを集め、外着や季節物は別にする案もあります。
洗濯後にしまう場所がまとまれば、複数の収納へ配る動きを減らせる場合があります。一方、取り出して着る人はどこから来るでしょうか。片付ける人の経路と、着替える人の経路の両方を図面に重ねます。
わが家では、浴室前の脱衣室を部屋干しにも使い、部屋着・パジャマ・下着・タオル類をしまう造り付けの棚を設けました。外着は別々に収納しています。家族の衣類を全部集める形ではなく、使う場所に合わせて一部を集める選択でした。
DAIKENの収納計画の案内でも、収納する物の種類や量によって必要な広さが変わることが説明されています。畳数だけで決めず、掛ける服、畳む衣類、季節物を入れた状態で、取り出す場所と通る場所が残るかまで見ておきます。
成長して着替える場所が変わっても使えるか
家族で共有する収納は、しまう量だけでなく、使う時間と着替える場所も大切です。朝に利用が重なったり、自分の衣類を分けて管理したくなったりすると、同じ配置でも使い方を変えたくなるかもしれません。
わが家で外着まで一か所に集めなかったのは、一度に着替えると邪魔になることも考えたためです。これはわが家の判断で、子どもの成長に合わせて家族収納を必ずやめるべき、という意味ではありません。
共有するタオルと、個人で管理したい服を分けられるか。誰かが着替えている間も、別の人が必要な物を取れるか。着替える場所を移す場合、衣類も使う場所へ振り分けられるか。今の量を入れた案を見ながら、将来変えたい使い方を設計担当者へ伝えておきましょう。
朝の支度と夜の過ごし方を重ねて、通り道を決める
回れるかより、同じ時間にどこを通るか
回遊動線は、複数の経路で家の中を行き来できるつくりです。ただ、図面の矢印が一周するだけでは、暮らしで役立つかまでは分かりません。
例えば、朝に服を選ぶ人と、洗濯物を運ぶ人が同じ場所を使う場面を置いてみます。別の経路を使える案なら、どちらへ回るか。短い一方向にまとめた案なら、どこで待つことになるか。収納の引出しや扉を開けた状態も含めて比べます。移動距離だけで家事の時短を判断しないことが大切です。
わが家では、廊下をできるだけ少なくし、その分を部屋や収納へ使いたくて、回遊動線を採用しませんでした。検討時に私が優先した空間配分であり、回遊動線なら必ず廊下が増える、ということではありません。
同時に用事が重なる場所を避ける経路があり、必要な収納や居場所も残せるなら、回遊できる案も比べる価値があります。回れること自体より、使いたい時間に使える道かを見ていきます。
近道のために失う収納壁や、静かに過ごす場所はないか
次は、通り道を描いた図面へ、置きたい家具と収納を重ねます。出入口の位置が変わると、棚や家具を置ける壁面も変わるためです。
トヨタホームの回遊動線の解説も、収納壁面や脱衣のプライバシー、家具配置を検討点に挙げています。便利な経路を足す案と、収納を使いやすく残す案の両方を見ておきたいところです。
夜の過ごし方も重ねてみましょう。休んでいる人の近くを何度も通るなら、通り抜ける位置や扉の開閉音が気になります。脱衣所を通る経路なら、着替え中に扉を閉めても別の場所へ行けるかをたどります。図面だけで音の性能までは判断せず、気になる時間と場所を設計担当者へ伝え、配置や建具の別案を相談します。
私が設備や間取りを選び分けた全体の理由は、注文住宅で残したもの・見送ったものにまとめています。
洗濯物を干している間も、水回りを使えるようにする
洗う・干す・乾かす・畳む・しまう場所をつなぐ
洗濯の動きは、洗濯機から干し場までで終わりません。乾くまでその場所を使い、その後に取り込んで、畳む物と掛ける物をそれぞれの収納へ戻します。洗濯機、干し場、作業場所、収納先を順にたどってみましょう。
例えば、干した場所の近くに棚があっても、そこへしまうのがタオルだけなら、外着は別の場所まで運びます。服を掛けたまましまいたいなら、その収納先までハンガーを運ぶ動きも残ります。何をどこまで一緒に行いたいかが決まると、必要なつながりが見えてきます。
わが家は独立した洗濯専用室を設けず、洗濯機のある洗面所、トイレ、脱衣所、浴室を水回りの区画にまとめました。脱衣室で干して衣類の一部をしまう使い方も、その中にあります。専用室がないことと、洗濯の場所を用意しないことは別です。
作業をほかの用途と分けて残したいなら専用室、脱衣などと同じ場所を使いたいなら兼用案を比べます。部屋名を決める前に、乾かしている間に占める場所まで、普段の洗濯量で見てもらいましょう。
入浴中・来客時の使い分けと、乾燥・手入れを一緒に考える
例えば、洗濯物を干している間に別の人が入浴し、洗面も使いたい場面を考えます。どの扉を閉めると、どこが使えなくなるでしょうか。パナソニック ホームズの案内でも、脱衣との兼用では入浴中の作業や来客からの視線が論点になっています。分ける場合も、各作業場所の行き来と、ほかの部屋へ残す面積を一緒に比べます。
わが家では、脱衣所・浴室の使用中でも洗面所・トイレを使えるよう工夫し、脱衣所は施錠できるようにしました。私はこの使い分けを、来客時も安心できると感じています。
人の使い分けとあわせて、乾燥の条件も設計担当者へ相談します。Panasonicの部屋干し案内は、温湿度、空気の動き、衣類同士の間隔を説明しています。窓や回遊経路があるだけで十分に乾くとは判断できません。扉を閉める使い方と干す量を伝え、換気・除湿や乾燥機器の計画を尋ねます。
機器の置き場は、使うときと手入れするときの両方を見ておきます。例えば除湿機なら、タンクを外して水を捨てる動きや、フィルターを取り出す場所も必要です。Panasonicの手入れ案内も機種による違いを示しています。候補機器の取扱説明書で、必要な空間と手入れ方法を確かめてもらいましょう。
候補図面に残したい暮らしと別案を書き込む
同じ生活場面を、候補案ごとにたどってみる
比較するときは、A案では帰宅後、B案では洗濯中というように場面を変えず、同じ動きを両方の図面でたどります。次の表は、比べ方を示す仮定の例です。筆者宅の再現や、一般的な家庭の実測ではありません。
| 図面に重ねる場面 | 比べる案の例 | 打合せへ持ち込むメモ |
|---|---|---|
| 帰宅後に上着を脱ぎ、後で部屋着へ着替える | 全衣類を集める/使う衣類だけ集める | 使う場所、収納量、着替えに残す場所 |
| 朝の身支度と、洗濯物を運ぶ動きが重なる | 回遊する/短い一方向にまとめる | 通れる経路、開ける扉、残したい収納壁 |
| 干している間に洗面・入浴を使う | 専用室を設ける/区切って兼用する | 閉める扉、使いたい設備、乾燥・手入れの条件 |
どちらも希望に合わなければ、その二案から無理に選ぶ必要はありません。残したい使い方に線を引き、何が両立しないのかを設計担当者へ渡す材料にします。
必要な使い方を伝え、面積・仕様・費用の違いを提案してもらう
図面へ書き込むのは、完成した設計の答えでなくても構いません。例えば、朝の着替えと洗濯物の片付けを同時にしたいなら、収納量を残した別の通り道があるかを尋ねます。入浴中も洗面を使いたいなら、扉を閉めた配置と、その状態での換気や音の扱いを説明してもらいます。
案が変わると、通路や収納の面積、建具、設備工事などの条件も変わります。専用室をなくせば安いと決めず、同じ希望を満たす別案で、面積・工事・手入れの条件がどう違うかを並べてもらいましょう。家全体の支払いと教育費などの両立は、住宅予算の考え方で整理しています。
私が大切にしたいのは、自分たちの生活に必要なものへお金と空間を使うことです。回遊動線や大きな収納を選ぶ家庭も、空間を区切る家庭も、その暮らしに合う理由があればよいと思います。
次の打合せには、今の暮らしで続けたいことと変えたいことを一つずつ、候補図面へ書き込んでみてください。憧れた家の形を、自分たちが望む暮らしに結び直すところから、必要な間取りを選んでいきましょう。

